博士の愛した数式(小川洋子) [小説感想]
80分しか記憶がもたない年老いた数学者。
そこに派遣された家政婦。
そしてその息子。
三人の心暖まる交流。
こんなにも暖かく美しい世界があるのだ。
今年、最高の一冊になりそう。
電子の星 池袋ウエストゲートパークIV (石田衣良) [小説感想]
スパイク (松尾由美) [小説感想]
愛犬のスパイクと散歩をしていた緑は、スパイクそっくりの犬を連れた幹夫と出会う。彼の連れている犬の名前もスパイク。意気投合した二人は、翌週も会う約束をするが、約束の場所に幹夫は現れなかった。
「あの人、どうして来なかったんだろう」
緑の言葉に、スパイクは答えた。
「まったくだ。どうしてだろうね。」
突然、言葉を話し出すスパイクは、実は幹夫のスパイクで先週、入れ替わってしまったのだと言う。
ミステリとして読むと拍子抜け。その仕掛けは…。
SFっぽいけど、設定が緩すぎないかなぁ?
恋愛小説としても中途半端。結局、作家先生の役割は、解説役?
と言う訳感じで、最期まで感情移入できませんでした。
伏線らしきものも、全て消化仕切れていない気がします。
Amazonの書評では、評価は高めなので、好き嫌いが出る作品なのかも知れませんね。ちょっと、期待して読んだだけに残念。
桜色BUMP―シンメトリーの獣 (在原 竹広) [小説感想]
桜子の通う高校の女生徒の間で人気のあったアンティークショップ『不思議堂』。その主人が殺される。死体は原型をとどめないほど切り裂かれていたという。そして、桜子の通う高校でも事件が起きる。
学園ファンタジーミステリーと銘打たれているが、ミステリ読みには明らかに物足りない展開というか、ちょっと、強引に感じた。ファンタジーとミステリの融合って、トリックの部分でそれを成功させるには、もっと、ファンタジーとしての世界観と言うか理を読者に開示しておかないと、ミステリとしてルール違反だと思っている。それが不十分だと、解決編を聞いても、カタルシスが味わえない。
しかし、なんだかんだ言って、結構、引き込まれて読めた。それは、キャラクターが活き活きしてるからだと思う。特に、桜子の張りつめていないのに、つけいる隙が無い感は、流行のツンデレキャラとひと味違って、良いですね。
これも、続巻を読まねばなるまい。
キャンパスは深夜営業 (赤川次郎) [小説感想]
大学生の久保山良二は、同級生の若林知香と恋いに落ちる。ある日、良二は、知香が夜になると決まっていなくなることに気づく。なんと、知香は、実は窃盗団の二代目ボスだったのだ。知香は、窃盗団から抜け、良二と駆け落ちする。逃げた先が、二人が通う大学の校舎。大学のとある場所で新生活を始めるも、折しも行われていた学部長選挙の不穏な動きに、二人は関わってしまう。
数ある赤川次郎作品で、何故これか、と言うと、全然意味はなくて、駅にある無料書籍コーナーで入手したから。
久々に、赤川次郎の作品を読んだ。
唐突な状況が変化するんだけど、何故か自然に読めるのは赤川マジック。多作だけど雑ってわけじゃない。実は技巧を凝らしている。赤川らしい大団円は、一種の時代劇の予定調和に似たカタルシスだ。
たまには、赤川もイイね。
世界の中心、針山さん (成田良悟) [小説感想]
成田良悟の短編集。
ベットの下に殺人鬼、の都市伝説を成田流にアレンジした『としれじぃ』。
やくざの家に魔女っ子が落ちてくる『魔法少女893号』。
とある島で大量に勇者が発生する悲劇を描いた『拝啓、光の勇者様』。
そして、これらの話が収斂していく『奇蹟の中心、針山さん』。
針山さんこと、針山真吉は、ごく普通の家庭を持った37才のデザイナー。特異な能力なんて何も持っていない。しかし、何か事件が起きると、何故かどこかで彼が関わることになる。
針山さんとは、全く関係無いところで事件が発生しながらどこかで針山さんがかすっていく。成田良悟は、こういった群像劇を描かせたら天下一品。相変わらず構成が巧い。テンポの良い文体で、一気読み。
『猫耳地底人』の正体には、笑った。
わたしたちの田村くん (竹宮ゆゆこ) [小説感想]
あきらめのよい相談者 (剣持鷹士) [小説感想]
月夜の晩に火事がいて (芦原すなお) [小説感想]
東京で私立探偵をしている”ぼく”こと山浦渉が、幼馴染みの依頼で懐かしい故郷に出向く。地元で一番の旧家木兵衛屋敷の当主に不幸の手紙が届き、何か事件が起きるのではないのか?と言うのだ。
月夜の晩に 火事がいて
水もってこーい 木兵衛さん
金玉おとして どろもぶれ
ひろいにいくのは 日曜日
山浦が郷里に帰るや、このわらべ歌通り、木兵衛は、金玉をつぶされて殺され、殺人の疑いまで掛けられてしまう。
何か田舎くさい感じのする妙な雰囲気の推理小説。
登場人物達が、それぞれ、濃い、というか、深い。
イミコさんが強烈。でも、こういう人、居そうな気がします。
ミステリで、この雰囲気と感覚はちょっと新鮮。
ただ、ミステリとしての仕掛けは、物足りなかったのが残念。
エラン (新谷かおる) [漫画感想]
10代の少年少女達が商社を作ってビジネスを始める。その目的は”ネバーランド”、自分たちの国を作るため。
設定も、ストーリーもかなりおもろかった記憶があって、最近読み直してみたらやっぱりおもろい。どうも連載当時人気がなかったようで、短期連載で終わってしまった作品。経済や法律用語も行き来して、新谷先生、かなり勉強して(もしくは優秀なブレーンがついて)連載に望んだ様子が伺われるが、時代が早すぎたか。もったいない。
商社をやる10代はあまり聞かないが、IT系では、学生企業も目立つ昨今。今、連載されていれば、それなりに人気の出た作品かもしれない。
いろんな伏線らしき話も未消化なまま。
もし時代が、とか、もし違う雑誌なら、とか、漫画に限らずだかそんな作品は数多ある。これも、その一つ。
続きを書い欲しいです。